診療内容 - レーザー治療

レーザー治療・網膜円孔・網膜剥離

I.網膜裂孔

網膜裂孔(もうまくれっこう)とは、眼の奥の網膜というところが一部破れている病気です。網膜裂孔を放置すると、網膜剥離になることがあります。網膜剥離は、適切に治療しないと失明する可能性がある怖い病気です。そのために、レーザー治療を行います。 治療は、網膜裂孔の周囲をレーザーで固めていきます(下図)。

〔1〕治療の目的:網膜剥離・裂孔・円孔を防ぐこと
〔2〕治療による副作用:一時的な炎症・視力の低下。レーザーの効果が出る前に、網膜剥離になってしまう方もいます。
〔3〕治療にかかる費用:3割負担の方で検査費も含め、4‐6万円程度、1割負担の方で1-2万円程度です。(網膜の状態により費用が異なります。)手術治療になるので、生命保険に加入されている方は、手術給付金が出ることがあります。治療の効果は、ご本人では自覚することはできなく、治療費が高いと感じるかもしれません。しかし、網膜剥離になると、入院・手術治療が必要になりますので、費用はさらにかかることになります。

原因)
硝子体(しょうしたい)剥離(はくり)が原因です。硝子体剥離とは、生まれたときは網膜についている硝子体が急激に収縮をして、網膜から離れる現象のことを言います。40代から60代程度に起きる、いわゆる加齢性の変化です。近眼が強い方は、さらに若い年齢で起こることがあります。セロファンテープを紙からはがすことを思い浮かべてみてください、紙が薄かったり、テープと紙のくっつきが強かったりすると紙が破れると思います。テープをはがすのが硝子体剥離で、紙が破れるのが網膜裂孔です。

治療後の注意点)
レーザー治療の効果が出るのに、1-2週間程度かかります。それまでは、激しい運動は控えてください。硝子体剥離が進行すると、他の網膜の場所にも網膜裂孔が生じる可能性があります。その時は、追加でレーザー治療をします。視界が狭くなったり、みえづらくなったりしたときは網膜剥離などになっている可能性があります。その時は、急いで来院してください。また、飛蚊症(ひぶんしょう)といって、虫が飛んでいるなどの症状は、この治療では日にちぐすりで軽減はするものの完全には消失しません。


網膜が一部破けるのが網膜裂孔です。


網膜裂孔を放置すると、網膜剥離になります。この状態になると、入院・手術が必要になります。


白い斑点がレーザー光線を当てた場所です。真ん中にあるのが、網膜裂孔です(白印

II.眼底出血・黄斑浮腫
(糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症など)

糖尿病・網膜静脈閉塞・加齢黄斑変性症などがあるときに行います。

・レーザー治療をせず放置した場合

眼底出血で網膜の血管がダメージを受ける→網膜の血流が悪くなる→網膜が酸素欠乏状態になる→網膜が酸素を必要とし、新生血管ができる※新生血管はもろく、破れやすい病的な血管です。

→パターン①
新生血管が破れる→①硝子体出血になる

→パターン②
新生血管が隅角という目の水の流れの出口にできる→目の中の水の流れが悪くなる→眼圧があがる→目の神経がダメージを受ける→視力が低下したり、視野が狭くなったりします(血管新生緑内障)

• 硝子体出血:目の中の硝子体(しょうしたい)というゼリー状の部分に大量出血することです。硝子体出血を起こすと、視力がいきなり低下したり、手術の治療が必要になったりします。

• 血管新生緑内障:治療に困難な緑内障になる可能性があります。点眼・手術治療を行っても失明する可能性があります。
●レーザー治療の目的
病気の進行を止めるためです。視力が改善したり、病気をなかったりすることはできません。
そのため、ご本人では治療したという自覚は感じません。
レーザーを網膜の血流が悪い部分に当てる→網膜の細胞が死滅する→網膜が酸素を必要としなくなる→新生血管ができなくなる。すでに新生血管がある場合には新生血管が小さくなる。→上記の硝子体出血と血管新生緑内障になる可能性を防ぐことができる。
●治療による合併症
レーザーで網膜の細胞を死滅させる→死滅した網膜の機能がなくなる→視力の低下や視界が狭く感じる。ものが暗くみえる場合もあります。
ただし、治療をしない場合に比べたときの視力の低下を抑えることができます。
●治療の方法
瞳孔を広げる必要がありますので、治療開始までに30-40分程度、準備の時間が必要になります。
麻酔の目薬をしたあとにレーザー用のコンタクトレンズをつけて行います。 多少の痛みを伴う場合がありますが、10 分から15 分程度で 1 回の治療は終わり ます。網膜全体に行う場合は症状に応じて、日を空けて通常数回程度(3-5回)に分けて 治療します。また必要に応じてレーザーを追加する場合があります。レーザー直後は暗く感じて見えにくくなることがありますが、普通は15分程で戻ってきます。当日は特に安静の必要はなく日常生活に制限はありません。
●治療の費用
片目の治療で病気によりますが、3割負担の方で3万5千円か5万円程度かかります。高額の医療になりますので、確定申告をすれば、所得などにより還付される場合もあります。領収書は保管しておいてください。手術治療になりますので、民間の医療保険に加入の方は給付金が出る場合があります。